2013年2月25日月曜日

おもてなしの『YES』『NO』とは

Barでは毎日様々なお客様がいらっしゃいます。

会社帰りの方。
待ち合わせの方。
顔見せに来る方。
町の平和の為に巡回(笑)されている方。

そして、それぞれに好きなお酒を愉しみ、時間を愉しみ、会話を愉しんで、空間を愉しみます。その為に、バーテンダーはあらゆる労を惜しまず『おもてなし』をしています。その結果帰り際にお客様はこう言うのです。

「ご馳走様、また来るよ」と。

この一言と笑顔こそが、ほとんどのバーテンダーや、サービスパーソンにとっての原動力、いわば「ガソリン」となっている人も多いはずです。しかし、冒頭でも述べたようにお客様は多種多様で、求めるモノも毎回同じとは限りません。また、それはメニュー内における注文や、お飲物や食べ物の事ではなく、全く異なる要求をしてくる場合もあります。

例えば、私が以前飲食店に勤めていた時に、こんなことがありました。

「花火を上げたいんですけど、花火をあげられますか?」
私はこのお客様と初めてお会いしたので、バックボーンもパーソナルな情報も何一つ持っていません。強いて言えば、20代後半、ピシっとしたスーツ姿で、とても爽やかな印象の身長170cm台、体重は60kg前後の男性だったと記憶しています。そこで、まず私は「はい。できます!」と力強く答えた上で、どのような状況なのか?場所は?時間は?目的は?と会話しながら要求の裏側にある感情を読み取っていきます。

そうすると気づくのが、サプライズを利用して、プロポーズをしたいという裏側にある、彼女への愛情の深さと、彼女の愛情を一身に受けたいというお客様の欲が垣間見えました。

そこで、私はお客様の為に、花火の製造会社やイベント会社、花火職人さんなどに連絡をして、可能なのか?幾らなのか?などと言った条件を整えて、お客様に提示致しました。すると、お客様は「ありがとうございます!」と言って、実際にプロポーズの際に花火を打ち上げたようでした。

実は、この時にはお店にとって1円の利益も出ていません。ですが、後日ご来店頂いた際に、手土産を頂いた上に、お飲物をご馳走して頂き、その後もお店をご利用頂ける常連になって頂けました。


このように、お客様が欲しいと思うものは本当に様々です。しかし、例えば城を買いたいんだが、とか飛行機を買いたいとか、雑誌で見たお店を探してくれとか言われると、一瞬途方に暮れたような顔になっていませんか?そして、断りの言葉を交えていないでしょうか?

私は、まずはそのような時に、ひとまず全力の笑顔と声で「YES」と答えます。しかし、そこで第一声で「いや」「でも」「だって」と前置してしまったり、「難しい」「出来ない」といったマイナスの言葉を吐いてしまうと、お客様を否定してしまいます。また言葉の端端から、『NO』の気持ちが見え隠れしていると、お客様は気付いてしまい、「もういいよ!」となってしまいます。


このように、おもてなしにおける『YES』や『NO』というのは、言葉だけの事ではないのです。その時のサービスパーソンの感情や表情、声量や声のトーン全てが、『YES』『NO』を現します。まして静かなBGMが流れるようなBARや、1:1の会話をしている時は、その会話が世界の全てなのです。サービスを提供する方々は、是非一度自分の仕事ぶりをビデオ撮影してみて下さい。どのようなトーンでお客様と会話をし、どのような表情で接しているのか?がつぶさにわかります。自分でも気づかないウチに『NO』を連発しているかもしれませんよ?


~最後に~
バーテンダーは技術者であり、セラピストであり、一流のサービスパーソンであることを求められます。それは一つ一つがとても難しい事ですが、それらが高いレベルで重なった時の化学反応は、とても文章では表現できない、素晴らしい体験を提供してくれるに違いありません。そして、私はそんなバーテンダーやサービスパーソンが一人でも多く生まれる事を願っています。
おわり

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